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ひとことで言うと:ニホニウムが「和光生まれ」と呼ばれるのは、和光市の理化学研究所(理研)で実験が行われ、亜鉛とビスマスをぶつけて9年かけて3個だけ作ったからです。研究所の中には普段入れませんが、和光市駅から約15分の「ニホニウム通り」は誰でも歩けます。足もとに118番までの元素が並ぶ、ちょっと変わった散歩道です。

なぜ和光で新元素が生まれたの?
答えは単純で、実験をした研究所が和光にあるからです。理研は1967年に東京・駒込から今の場所へ移ってきました(マイナビニュースの解説による)。113番元素の実験は、その和光の敷地にある加速器RILACと、できた原子をより分ける装置GARISを使って進みました。
やり方は、足し算で説明できます。原子番号30の亜鉛を、原子番号83のビスマスにぶつける。うまく融合すれば30+83で113番です。ただ、狙いどおりくっつくことはめったにありません。2003年9月に探索を始め、成功は2004年7月23日、2005年4月2日、2012年8月12日の3回だけ。理研の発表では、1回目の成功までに約79日、2回目に約100日、3回目に約350日のビーム照射が必要でした。できた原子も約1000分の2秒で壊れてしまうので、壊れていく連鎖を観測して「確かにできた」と証明します。
「和光で生まれた」と言っても、何かが残っているわけではありません。作られた3個はとっくに消えています。形として残ったのは周期表の名前と、これから紹介する道のほうです。
「日本の名前」が周期表に載るまで、なぜ100年以上かかった?
ニホニウムの前に、日本には苦い歴史が2つありました。1908年、化学者の小川正孝が新元素を見つけたとして「ニッポニウム」と名付けましたが、再確認ができず取り消されます。1940年には仁科芳雄が93番元素を合成したものの実験が不十分で、命名権はアメリカの研究者らが獲得しました(JSTサイエンスポータルによる)。理研の加速器センターに今も仁科の名が付いているのは、この人に由来します。
113番でも、ロシアとアメリカの共同グループが発見を主張し、争いになりました。決着は2015年12月31日の発表で、国際純正・応用化学連合(IUPAC)が理研の森田浩介氏らのグループを発見者と認定します。欧米以外の研究グループに命名権が与えられたのは初めてでした。翌2016年11月30日、名称ニホニウム、記号Nhが正式に決まっています。
- 1908幻のニッポニウム
小川正孝が命名。のちに取り消し
- 2003113番の探索を開始
9月、亜鉛のビームをビスマスへ
- 2004〜12探索開始から約9年で3回の成功
2004年7月、2005年4月、2012年8月
- 2015命名権を獲得
12月31日に理研が発表
- 2016ニホニウムに正式決定
11月30日。記号はNh
- 2019ニホニウム通りが完成
3月に和光市の整備事業が完了
ニホニウム通りでは何が見られる?
和光市駅と理研を結ぶこの道は、和光市の公式の整備事業で作られました。路面に埋まっているのは1番から118番までの元素プレート。駅を出た水素から歩きはじめ、番号をたどるうちに理研へ着く仕掛けです。おまけに道路の番号は「市道113号線」。役所の台帳まで元素に揃っていて、気づくとにやりとします。
駅南口の緑の案内看板の裏には周期表があり、そばに合成・発見の記念碑が立っています。東京外環自動車道のあたりにはNhの立体モニュメント、さらに進むと周期表の碑が立っています。地元情報サイトMy Town東上線の案内によれば、周期表の碑はニホニウムだけ色が違っていて、プレートのNhは理研の入口の前。その先に数枚だけ続いて118番のOgで終わります。写真を撮るなら、周期表の碑と入口前のNhの2か所が目印になります。
親子で歩くなら:出発前に「金(Au)は何番?」「知っている元素はいくつある?」と問題を出すと、ただの道がクイズになります。答えは79番。銅29番、銀47番と、知っている名前を足もとで探しながら歩けます。
理研の中には入れる?見学できる日は?
普段は入れないと考えてください。敷地内の理研ギャラリーも、理研の案内では個人見学を受け付けていません。誰でも入れるのは年に1度の「和光地区一般公開」です。2026年は11月3日に開かれ、入場は事前申し込み制で定員に達して締め切られました。2025年は10月に開かれていて時期は毎年同じではないので、次回の日程は理研のイベントページで確かめるのが確実です。
注意:「ニホニウムの実物」を見られる場所はありません。寿命が約1000分の2秒の原子なので、展示のしようがないのです。通りの散歩は無料で、予約も要りません。
場所と行き方は?駐車場はある?
| 名称 | 国立研究開発法人 理化学研究所 和光地区 |
|---|---|
| 住所 | 埼玉県和光市広沢2-1 |
| 電車 | 東武東上線・東京メトロ有楽町線・副都心線の和光市駅から徒歩約15分。歩道橋を2回渡ります |
| バス | 和光市駅から西武バス「大泉学園駅」行き(39番)で約10分、「広沢」下車 |
| 駐車場 | 来訪者向けの案内は公式に記載なし。一般公開の日は車で来場できません。代表 048-462-1111 で確認を |
通りの出発点は和光市駅の南口です。ベビーカーや足に不安のある人は歩道橋が負担になるので、片道はバスにする手もあります。
散歩のあとに足を延ばすなら、紅葉の名所でもある和光樹林公園へ。理研ではほかにも、量子コンピュータの話題をこちらの記事で紹介しています。
よくある質問
ニホニウムの名前の「日本」は和光市と関係ある?
名前は国名の「日本」から来ていて、和光市の名は入っていません。ただ合成の場所は和光市で、和光市は駅からの道をニホニウム通りとして整備しました。
元素プレートは全部見つけられる?
市の案内では1番から118番まで路面に設置されているので、順にたどれば全部見られます。下を見ながら歩くことになるので、周りの歩行者や自転車には注意してください。
ニホニウムは何の役に立つの?
すぐ壊れるため、製品に使う元素ではありません。価値は原子核の成り立ちを調べる基礎研究にあります。
出典と確認日
理化学研究所「113番元素の命名権獲得」(2015年12月31日)、「新元素の名称・記号が正式決定」(2016年11月30日)、施設見学案内、和光地区へのアクセス、和光地区一般公開2026/和光市「ニホニウム通り 完成のご案内」/日本化学会の解説資料(森田浩介氏)/JSTサイエンスポータル(2016年6月8日)/マイナビニュース、My Town東上線。確認日:2026年11月4日。

