国民健康保険税は、住んでいる市町村が税率を決めています。同じ年収・同じ世帯構成でも、市が違えば金額が変わります。
埼玉県内の主要4市について、まったく同じ条件で計算してみたところ、年間でちょうど3万円の差がありました。
そして2026年度(令和8年度)、この4市はすべて税率を引き上げています。所沢市にいたっては1年で3万8千円の増額です。背景には、埼玉県が進めている「保険税水準の統一」があります。
年収300万円・40歳・単身で試算した結果
条件をそろえて計算しました。給与収入300万円、40歳、ひとり暮らし(単身世帯)、2026年度の税率です。
| 市 | 年額 | 月あたり |
|---|---|---|
| 所沢市 | 303,600円 | 約25,300円 |
| 川口市 | 277,100円 | 約23,100円 |
| さいたま市 | 276,700円 | 約23,100円 |
| 川越市 | 273,600円 | 約22,800円 |
最も高い所沢市と最も安い川越市の差は年30,000円、月あたり2,500円です。
40歳未満の場合は介護分がかからないため、金額はこうなります。
| 市 | 年額(40歳未満) |
|---|---|
| 所沢市 | 242,300円 |
| さいたま市 | 223,000円 |
| 川口市 | 222,600円 |
| 川越市 | 221,300円 |
この場合の差は年21,000円です。
※各市が公表している2026年度の税率をもとに、区分ごとに100円未満を切り捨てて計算した概算です。実際の税額は世帯構成・所得の内訳・軽減措置によって変わります。2026年度に新設された子ども・子育て支援納付金分は、4市そろって数値を確認できなかったため含めていません。
4市はすべて2026年度に値上げしています
2025年度(令和7年度)の税率で同じ計算をして比較しました。
| 市 | 2025年度 | 2026年度 | 差 |
|---|---|---|---|
| 所沢市 | 265,600円 | 303,600円 | +38,000円(+14.3%) |
| さいたま市 | 256,600円 | 276,700円 | +20,100円(+7.8%) |
| 川越市 | 258,400円 | 273,600円 | +15,200円(+5.9%) |
川口市も2026年度に改定していますが、前年度の税率が公式サイトで画像として掲載されており、数値を正確に読み取れなかったため、比較表から外しています。
注目したいのは所沢市の+14.3%です。1年で税額が1割以上増えました。ただしこれは、所沢市が突出して高い税率を課しているという話ではありません。所沢市は改定の理由を公式サイトで説明しています。
国保加入者の減少による保険税収入の減少、および埼玉県の標準保険税率に合わせるための赤字解消
つまり、県が示す水準に合わせるために上げたということです。ここが今回の本題につながります。
埼玉県は2030年度に保険税を統一します
埼玉県と県内63市町村は、令和12年度(2030年度)に国民健康保険税を完全統一するという目標を掲げています。県の公式サイトはこう説明しています。
県内のどこに住んでいても、同じ世帯構成、所得であれば同じ保険税となること
そしてその前段階として、令和9年度(2027年度)に「準統一」を目指しています。市町村間の収納率の差など一部の項目を除いて、税率をそろえる段階です。
| 2027年度 令和9年度 | 準統一 一部項目を除いて統一 |
|---|---|
| 2030年度 令和12年度 | 完全統一 同じ世帯構成・所得なら県内どこでも同額 |
これは埼玉県だけの動きではありません。国(厚生労働省)が令和6年度から令和11年度までを統一の加速化期間と位置づけており、県によれば令和6年度時点で2府県がすでに完全統一を実施しています。
統一されると、上がる市と下がる市が出ます
ここが重要です。県はQ&Aで、こう明記しています。
保険税を統一すると、基本的に県平均の税率となるため、市町村ごとに見て平均以下の税率の市町村は税率が上がり、平均以上の税率の市町村は税率が下がることになります。
さらに、県が示す標準保険税率を下回る税率にしている市町村は、税率が上がるとも書かれています。所沢市の値上げは、まさにこの流れの中で起きたものです。
県全体で見れば負担が増えるわけではない、というのが県の説明です。ただし個々の市町村で見れば、今が安い市ほど、これから上がる可能性が高いということになります。
国保税はこう計算されています
自分の保険税を知りたい場合、仕組みが分かれば計算できます。国保税は3つ(2026年度から4つ)の区分に分かれ、それぞれに所得割と均等割があります。
| 区分 | 対象 |
|---|---|
| 医療分 基礎課税額 | 加入者全員 |
| 後期高齢者支援金分 | 加入者全員 |
| 介護納付金分 | 40歳〜64歳の人だけ |
| 子ども・子育て支援納付金分 2026年度に新設 | 加入者全員 |
計算の流れは次のとおりです。
- 所得割=(前年の総所得金額等 − 基礎控除43万円)× 各区分の税率
- 均等割= 加入者1人あたりの定額
- この2つを区分ごとに足して、合計したものが年税額
今回の試算では、給与収入300万円から給与所得控除98万円を引いて給与所得202万円。そこから基礎控除43万円を引いた159万円が計算のもとになる金額(賦課基準額)です。
たとえば所沢市の医療分は、159万円 × 8.51% + 43,065円 = 178,300円(100円未満切り捨て)となります。
4市の税率
2026年度の税率です。いずれも平等割(世帯あたりの定額)はありません。
| 市 | 医療分 | 支援金分 | 介護分 |
|---|---|---|---|
| さいたま市 | 7.64% 43,300円 | 2.73% 14,900円 | 2.37% 16,100円 |
| 川口市 | 7.45% 44,000円 | 2.78% 16,000円 | 2.36% 17,000円 |
| 川越市 | 7.33% 44,900円 | 2.73% 16,500円 | 2.27% 16,300円 |
| 所沢市 | 8.51% 43,065円 | 3.22% 12,885円 | 2.77% 17,354円 |
上段が所得割率、下段が均等割額(1人あたり年額)です。
所沢市は所得割率が3区分すべてで最も高く、そのぶん所得が多いほど他市との差が開きます。逆に均等割だけを見ると、支援金分は所沢市が最も低くなっています。所得の水準によって、どの市が高いかは変わるということです。
2026年度は限度額も上がりました
国保税には上限(賦課限度額)があります。これも2026年度に引き上げられました。
| 区分 | 2026年度の上限 |
|---|---|
| 医療分 | 66万円 さいたま市のみ67万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 26万円 |
| 介護納付金分 | 17万円 |
| 子ども・子育て支援納付金分 | 3万円 2026年度に新設 |
川越市は合計の限度額が2025年度の106万円から112万円に6万円引き上げられたことを公表しています。高所得の世帯ほど、この上限の引き上げが直接効いてきます。
よくある質問
引っ越せば保険税は安くなりますか?
現時点では市町村によって差があるので、理屈のうえでは変わります。ただし2027年度に準統一、2030年度に完全統一が予定されているため、この差は数年かけて縮まっていく見込みです。保険税だけを理由に住む場所を決めるのは、長い目で見ると合理的とはいえません。
なぜ市町村によって違うのですか?
県の説明によれば、市町村ごとに財政状況や保健事業の内容が違うためです。加入者数が減って国保の規模が小さくなると、高額な医療費が発生したときに一気に税率を上げざるを得なくなる、という構造的な問題もあります。統一はこのリスクを県全体で分かち合うための取り組みです。
統一されたら安くなりますか?
県は「県全体で見ると、保険税水準を統一することによって保険税の負担が増えるものではない」としています。ただし平均より安い市町村は上がり、高い市町村は下がります。また県は別途、医療費の増加によって県全体の保険税負担は増えていく見込みとも説明しています。統一と、医療費増による値上げは別の話です。
軽減される制度はありますか?
所得が一定以下の世帯には、均等割を7割・5割・2割軽減する制度があります。また未就学児の均等割は半額になります。今回の試算はこれらの軽減を適用していない金額です。詳しくはお住まいの市町村の国保担当課にご確認ください。
県が公表している「標準保険税率」とは何ですか?
県が統一のルールで算定した理論上の数値です。県は「標準保険税率がそのまま各市町村の保険税率となるものではありません」と明記しており、実際の税率は各市町村が独自財源の活用などを踏まえて決めます。今回の記事で使ったのは、各市が実際に採用している税率のほうです。
まとめ
- 年収300万円・40歳・単身で試算すると、所沢市303,600円、川越市273,600円で年30,000円の差
- 主要4市はすべて2026年度に値上げ。所沢市は1年で+38,000円(+14.3%)
- 所沢市は理由として「埼玉県の標準保険税率に合わせるための赤字解消」を公式に挙げている
- 埼玉県は2027年度に準統一、2030年度に完全統一を目指している
- 統一されると平均より安い市町村は上がり、高い市町村は下がる
- 2026年度から子ども・子育て支援納付金分が新設され、限度額も引き上げられた
※この記事は2026年9月時点で各市および埼玉県が公式サイトに掲載していた税率・方針にもとづく試算です。実際の税額は世帯構成、所得の内訳、軽減措置の適用によって変わります。正確な金額はお住まいの市町村の国民健康保険担当課にご確認ください。

