結論:映画『となりのトトロ』(1988年公開)の舞台は、特定の1か所ではありません。所沢市や、作品の名を借りて森を守る「トトロのふるさと基金」は、埼玉と東京にまたがる狭山丘陵を「舞台のモデルの一つ」と説明しています。その狭山丘陵には、寄付で買い取った雑木林「トトロの森」が67号地まで(2026年6月時点)点在し、誰でも無料で歩けます。
ただし森にはトトロの像も売店も駐車場もありません。行くなら西武線と路線バスで。古民家「クロスケの家」は火・水・土曜のみ、事前予約制で見学できます(500円)。

所沢駅のホームに立つと、発車のたびに「さんぽ」や「となりのトトロ」のメロディが流れます。市制施行70周年の2020年11月から始まったもので、西武鉄道と所沢市の発表資料には、所沢市が「トトロの生まれたところ」として広く知られている、と書かれています。では、トトロは本当に所沢で生まれたのか。どこへ行けば、あの雑木林の空気に触れられるのか。公的な資料と基金の説明をもとに整理しました。
トトロの舞台は本当に所沢なの?
答えは「所沢を含む狭山丘陵が、モデルの一つといわれている」です。所沢市の市制施行70周年記念誌は、狭山丘陵が『となりのトトロ』の舞台のモデルの一つになったといわれる、と書いています。トトロのふるさと基金のよくある質問も同じ表現で、断定はしていません。所沢駅の発車メロディを発表した西武鉄道と所沢市の資料も、映画の舞台には所沢市近郊の原風景が参考にされたとされる、という言い方です。
「所沢説」が広く語られるのは、作中に出てくる地名や風景に所沢との重なりを見つけるファンが多いからです。たとえば作中に「松郷」という地名が見えると語られることがあり、所沢市にも同じ「松郷」という地名があります。ただし所沢市の松郷は市の東部で、狭山丘陵からは離れています。一方で、作品は昭和30年代ごろの日本の田園を描いたもので、一つの町をそのまま写したものではありません。「所沢が舞台」と言い切るより、「狭山丘陵の雑木林や農村の風景が下敷きになった」と考えるのが、資料に沿った理解です。
狭山丘陵ってどんな場所?
狭山丘陵は、埼玉県の所沢市・入間市と東京都の東村山市・東大和市・武蔵村山市・瑞穂町にまたがる、東西約11キロ、南北約4キロの丘陵です。所沢市の記念誌によると、上空から見ると島のように見えるのは、大昔の多摩川が削り残した台地だから。丘陵の真ん中には狭山湖(山口貯水池)と多摩湖(村山貯水池)があり、まわりにコナラやクヌギの雑木林、谷戸(やと)と呼ばれる湿地、畑が入り組んでいます。
埼玉県の資料は、この丘陵を東京ドームおよそ750個分の広さを持つ緑地とし、雑木林や湿地には植物や昆虫がそれぞれ1,000種以上暮らすと紹介しています。住宅街のすぐ裏に、メイとサツキが駆け回ったような薄暗い林の道が続いている。それがこの丘陵のいちばんの魅力です。
「トトロの森」とは?誰が守っている?
「トトロの森」は、公益財団法人トトロのふるさと基金が市民や企業からの寄付金で土地を買い取り、開発から守っている雑木林の呼び名です。イギリス発祥の「ナショナル・トラスト」という手法で、基金は1990年に活動を始め、1991年8月8日に「トトロの森1号地」が誕生しました。その後少しずつ増え、2026年6月10日に67号地が加わっています。
基金のよくある質問によると、宮崎駿監督はこの活動の発起人で、顧問も務めました。トトロの森のためのイラストも描いています。ただし「トトロ」の名前や絵の著作権は映画会社にあり、基金は二次利用を認めていない、とも明記しています。森の手入れは、ボランティアグループ「トトロの森で何かし隊」などが、下草刈りや倒木の処理を続けています。
トトロの森に「ないもの」
基金は、森には手作りの案内板があるだけで、遊具・トトロの像・飲食店・売店はなく、入口や出口、開園時間、入場料、駐車場もないと案内しています。テーマパークのつもりで行くとがっかりします。ふだんの雑木林を、そのまま歩きに行く場所です。
どこから歩き始めればいい?3つの入口
67号地までの森は丘陵のあちこちに散らばっていて、どこか1か所を目指すより、拠点を決めて周辺を歩くほうが楽しめます。初めてなら、次の3つのどれかから入るのがおすすめです。
A 狭山丘陵いきものふれあいの里センター(予約なし・無料)
- 場所:所沢市荒幡782(所沢市の観光ガイドでは、ところバス「下山口駅入口」から徒歩約15分。西武狭山線「下山口」駅からも歩ける)
- 開館:9時〜17時。月曜(祝日は開館)・祝日の翌日・年末年始は休館
- 向いている人:初めての人、子ども連れ。展示で丘陵の生き物を知ってから林の散策路へ
B トトロの森1号地(いつでも・無料)
- 場所:所沢市上山口351(所沢市のコミュニティバス「ところバス」山口循環コースの「堀口」から徒歩7分。乗り場と時刻は所沢市のページで確認を)
- 開館時間・入口:なし(森の中を歩くだけ)
- 向いている人:「最初の1か所」を自分の足で確かめたい人
C クロスケの家(火・水・土曜・予約制・500円)
- 場所:所沢市三ケ島(小手指駅南口から西武バス「早稲田大学」または「宮寺西」行き、「大日堂」下車徒歩約5分)
- 見学:10時〜12時、13時〜15時の2回。各回40人まで先着の予約制。入館は小学生以上500円(現金のみ)
- 向いている人:昭和の農家の暮らしを感じたい人。駐車場はない
クロスケの家は、築100年以上の古民家を基金が保全の拠点にしているもので、母屋・蔵・茶工場は国の登録有形文化財です。基金の案内では、2026年10月6日から奥座敷がしばらく閉鎖されています(南側の座敷や蔵は見学可)。予約は基金のサイトの見学申込カレンダーから。祝日・お盆・年末年始は閉館で、臨時休館もカレンダーに出ます。
半日で歩くならどう回る?
予約なしで行ける、Aの拠点を使ったプランです。下山口駅から歩くか、ところバスで向かえるので、車がいりません。
- 10:00西武狭山線「下山口」駅
西所沢駅で狭山線に乗り換え。駅から住宅街を抜けて歩く(道順と所要時間は地図アプリで確認を)
- 10:30ごろいきものふれあいの里センター
展示で丘陵の生き物を予習。散策路の様子もここで確認
- 11:00雑木林と谷戸を歩く
コナラ・クヌギの林と湿地。1時間ほどのんびり
- 12:15駅へ戻る
森の中に売店はないので、飲み物は駅周辺で用意しておく
クロスケの家も見たい場合は、火・水・土曜に予約を入れ、小手指駅からバスで向かう日を別に取るのが確実です。予約が埋まっていたら、無理に詰め込まず、センターを拠点に雑木林を歩く日にするのがおすすめです。バスの本数は時間帯で変わるので、西武バスの時刻表で帰りの便まで確認してから出かけてください。
歩くときのマナーと注意は?
基金は、森の木が大きくなりすぎたことによる倒木の危険や、ナラ枯れの広がりにも対応していると事業計画で説明しています。立入禁止のロープや工事中の表示があるところには入らないようにしましょう。
よくある質問
Q. トトロに会える(像や大きなオブジェがある)?
ありません。基金は森にトトロの像はないと明記しています。トトロの姿を見たいなら、所沢駅の発車メロディで雰囲気を味わうくらいがちょうどいい場所です。
Q. 入場料はかかる?
トトロの森といきものふれあいの里センターは無料です。有料なのはクロスケの家(小学生以上500円、障害者手帳を持つ人は無料)だけです。
Q. 寄付するとどうなる?
寄付金は新しいトトロの森の取得や手入れに使われます。基金のサイトから支援の申し込みができ、オリジナルグッズの売り上げも活動費になります。
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参考:公益財団法人トトロのふるさと基金(トトロの森、トラスト取得地、クロスケの家、よくある質問、2023年度事業計画)、所沢市「市制施行70周年記念誌」「所沢観光ガイド」、西武鉄道・所沢市「所沢駅の発車メロディを『となりのトトロ』に」(2020年9月17日)、埼玉県「みどりと生き物」学習コンテンツ


