結論:埼玉県には、県立の男子校が5校、女子校が7校、あわせて12校の男女別学校があり、公立の別学校の数は全国で最も多いとされます(WEBアステイオン、2026年)。戦後、GHQの指導で公立高校の共学化が進んだとき、北関東や東北の一部では明治以来の男子校・女子校がそのまま残りました。埼玉はその代表です。
埼玉県教育委員会は2024年8月、「主体的に共学化を推進していく」方針を打ち出しました。ただし2026年6月の県議会でも、共学化の時期や対象校は示されていません。在校生や卒業生を中心に、別学を残すよう求める声も根強く、議論は続いています。

「浦高(うらこう)」「一女(いちじょ)」と呼ばれる浦和高校と浦和第一女子高校。川越と川越女子、春日部と春日部女子。埼玉で育った人には当たり前の男子校・女子校のペアが、県外の人には驚かれることがあります。公立なのに、なぜ男女別なのか。そして、いま何が議論されているのか。県の公表資料と報道をもとに整理しました。
埼玉の県立別学校はどこ?12校の一覧
埼玉新聞の報道(2024年8月22日)によると、県立の男女別学校は、男子校が浦和・春日部・川越・熊谷・松山の5校、女子校が浦和第一女子・春日部女子・川越女子・久喜・熊谷女子・鴻巣女子・松山女子の7校です。久喜高校は名前に「女子」が付きませんが女子校、というのは受験生がよく驚くポイントです。
下の表は、県教育委員会が公表した令和8年度(2026年度)入試の志願者数の資料(志願先変更1日目の時点)から、全日制普通科の募集人員と志願倍率をまとめたものです。志願先変更の途中の数字なので、最終的な倍率とは少し異なります。
| 学校名 | 種別 | 所在地 | 募集人員 | 志願倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 浦和 | 男子校 | さいたま市浦和区 | 360人 | 1.23倍 |
| 浦和第一女子 | 女子校 | さいたま市浦和区 | 360人 | 1.23倍 |
| 川越 | 男子校 | 川越市 | 360人 | 1.37倍 |
| 川越女子 | 女子校 | 川越市 | 360人 | 1.22倍 |
| 春日部 | 男子校 | 春日部市 | 360人 | 1.32倍 |
| 春日部女子 | 女子校 | 春日部市 | 240人 | 1.03倍 |
| 熊谷 | 男子校 | 熊谷市 | 280人 | 1.13倍 |
| 熊谷女子 | 女子校 | 熊谷市 | 280人 | 1.13倍 |
| 松山 | 男子校 | 東松山市 | 280人 | 0.80倍 |
| 松山女子 | 女子校 | 東松山市 | 320人 | 0.97倍 |
| 久喜 | 女子校 | 久喜市 | 280人 | 0.86倍 |
| 鴻巣女子 | 女子校 | 鴻巣市 | 80人 | 0.49倍 |
浦和・川越・春日部の男子校、浦和第一女子・川越女子は倍率1.2倍を超え、いまも人気があります。一方、地域によっては定員割れの学校もあり、少子化のなかで学校のあり方をどうするかという課題も、共学化の議論と重なっています。
なぜ埼玉には別学が多く残ったの?
戦後の学制改革で、新しい高校は「小学区制・総合制・男女共学」の三原則を柱に再編されました。各地の軍政部がこれを強く進めた地域では、旧制中学と高等女学校が統合され、一気に共学になりました。ところが、その進み方は地域によって大きく違いました。
2026年7月のWEBアステイオンの論考は、北関東と東北の一部で別学校が残った背景として、GHQによる一方的な押し付けへの反発と、別学を続けたいという教育現場の声があったと指摘しています。浦和高校や浦和第一女子高校のように明治期から続く学校は、地域の中で長く「男子の進学校」「女子の進学校」として知られてきました。こうした長い歴史が、いまの議論でも賛否の両方で語られています。
共学化の議論はいつから?これまでの流れ
- 2002年共学化の勧告(1回目)
県の男女共同参画苦情処理委員が勧告
- 2003年「当面は別学維持」
県教委が決定。その後2008年度にかけて一部の別学校が共学化
- 2023年8月早期の共学化を勧告
苦情処理委員が2度目の勧告
- 2024年春中高生・保護者アンケート
回答は合計7万8,628件
- 2024年8月「主体的に共学化を推進」
時期・校名は示さず。反対署名は約3万4千人分
- 2026年6月県議会で再び質問
新教育長も推進の姿勢。時期は示さず
2023年8月30日の勧告で、県の男女共同参画苦情処理委員は、男女別学そのものが女子差別撤廃条約に直ちに違反するわけではないとしつつ、条約が共学での教育を奨励していること、別学校で管理職や教職員の男女の格差が見られることを挙げ、県立高校の共学化を早期に実現すべきだとしました。
これを受けて県教委は2024年4〜5月に中高生と保護者へのアンケートを行い、8月22日の報告書で「主体的に共学化を推進していく」と結論づけました。今後は地域別の意見交換や有識者からの意見聴取を進め、共学化する際は学校の歴史や伝統を尊重しながら新しい伝統づくりを支援する、としています。県内の中高生を対象にした意見交換会も開かれました(当時の募集の記事)。
賛成派と反対派、それぞれの言い分は?
県教委の措置報告にまとめられたアンケートの結果から、それぞれの側で多かった理由を並べると、次のようになります。
共学化した方がよいという意見
- 性別によって入学できない高校があるのは公平ではない
- 異性への理解やジェンダー平等への理解が進む
- 性別にかかわらず、さまざまな役割を経験できる
別学を残した方がよいという意見
- 共学校と別学校の両方を選べる方がよい
- 安心して過ごせる友人や居場所がある
- 伝統や校風、学校の雰囲気が失われる
2026年6月22日の県議会では、別学の維持を求める中高生や保護者の有志が、教育委員と直接意見を交わす場を何度も求めてきたことが取り上げられました。石川薫教育長は、4月6日に出された要望書を2,730人の賛同によるものと認識していると答えました。そのうえで、男女が互いに協力して高校生活を送ることに意義があるとし、こども・若者の最善の利益を考えながら「主体的に共学化を推進してまいります」と答弁しています。別学の維持を求める意見の扱いについては、最善の利益の観点から合理的に判断するとしました。どちらが正しいかというより、「選べる自由」と「性別で入れない学校がある不公平」をどう両立させるかが問われている、と言えます。
受験生への影響は?いつ共学になる?
注意:2026年10月時点で、共学化の時期と対象校は発表されていません。令和8年度(2026年度)入試も、12校は従来どおり男子校・女子校として生徒を募集しました。志望校を考えるときは、県教育委員会が毎年発表する入学者選抜の実施要項と、各校の学校説明会で最新の情報を確かめてください。
仮に共学化が決まっても、制服や更衣室・トイレなどの施設、部活動の体制などを整える準備期間が必要になります。受験を控えた中学生にとって大事なのは、ニュースの見出しだけで判断せず、自分が受ける年度の募集要項を確認することです。
よくある質問
Q. 埼玉以外にも公立の男子校・女子校はある?
あります。群馬県や栃木県には公立の男子校・女子校が、千葉県には県立の女子校(千葉女子・木更津東)が残っています。そのなかで埼玉は、公立の男子校5校・女子校7校と、全国で最も多いとされています。
Q. 私立の男子校・女子校とは何が違う?
私立は学校法人が教育方針として別学を選んでいます。県立高校は県民の税金で運営される公立校なので、「性別で入学できない」ことの是非が問われやすく、議論の中心になっています。
Q. 浦和高校と浦和第一女子高校はどこにある?
どちらもさいたま市浦和区にあります。浦和の街と学校の関係は、浦和と大宮はなぜ仲が悪い?|対立の150年史や、埼玉師範と浦和の高校が活躍した高校サッカー選手権埼玉県勢の歴史でも紹介しています。
あわせて読みたい
参考:埼玉県教育委員会「埼玉県男女共同参画苦情処理委員からの勧告に対する措置報告」(2024年8月22日)・「埼玉県立の男女別学校に関するアンケート」結果・令和8年度公立高等学校入学志願者数、埼玉県男女共同参画苦情処理委員の勧告(2023年8月30日)、埼玉県議会 令和8年6月定例会 一般質問(速報版)、埼玉新聞(2024年8月22日)、WEBアステイオン(2026年7月8日)


