この記事のポイント:埼玉県の国宝は5件(2026年10月21日現在)。熊谷市の歓喜院聖天堂、行田市の稲荷山古墳出土品(金錯銘鉄剣ほか)、大宮の県立歴史と民俗の博物館にある景光の太刀と短刀「謙信景光」、ときがわ町・慈光寺の法華経一品経(慈光寺経)です。実物をいつでも見られるのは聖天堂と金錯銘鉄剣の2件。2本の刀は年に一度の期間限定公開で、慈光寺経は寺では陶器に写した複製で見られます。
「埼玉に国宝なんてあったっけ?」と思う人は多いかもしれません。県の文化財の一覧では、県内の国宝は建造物が1件、工芸品が2件、書跡が1件、考古資料が1件の合わせて5件です。数は多くありませんが、日光東照宮と比べられる極彩色のお堂、日本の古代史を書き換えた115文字の鉄剣、上杉謙信が持っていた短刀と、どれも物語のある宝ばかり。この記事では5件を一つずつ紹介し、「どこで、いつなら実物を見られるのか」をまとめました。

埼玉の国宝は何件?5件の一覧
実物に会いやすい順に並べました。「見られる時期」は2026年11月2日に各施設の案内で確かめた内容です。
| 国宝 | 種類 | ある場所 | 実物を見られる時期 |
|---|---|---|---|
| 歓喜院聖天堂 | 建造物 | 妻沼聖天山(熊谷市妻沼) | 通年(本殿拝観700円) |
| 稲荷山古墳出土品(金錯銘鉄剣ほか) | 考古資料 | 県立さきたま史跡の博物館(行田市) | 2026年2月28日から実物を公開中 |
| 太刀 銘 景光・景政 | 工芸品 | 県立歴史と民俗の博物館(さいたま市大宮区) | 期間限定の公開(2026年は1月27日〜3月1日) |
| 短刀 銘 備州長船住景光(謙信景光) | 工芸品 | 同上 | 太刀と同時に公開 |
| 法華経一品経(慈光寺経) | 書跡 | 慈光寺(ときがわ町西平) | 寺では陶器の複製を展示。実物は博物館の展示の機会に限られる |
5件はすべて県内の寺と県立の博物館にあり、どこも都心から日帰りで行ける距離です。ただ、いつ行っても実物に会えるとは限らないので、表の右の列を確かめてから出かけてください。
歓喜院聖天堂:庶民の寄付で建った「埼玉日光」
熊谷市の北のはずれ、利根川に近い妻沼(めぬま)の妻沼聖天山歓喜院にある本殿です。2012年(平成24年)に国宝に指定され、今も県内で唯一の国宝建造物。拝殿・中殿・奥殿を一つの屋根でつないだ権現造で、外壁は彫刻と彩色、金具で埋めつくされています。日光東照宮と同じ形式と華やかさから「埼玉日光」とも呼ばれます。
国宝になった理由として文化庁が挙げるのは、装飾の見事さだけではありません。江戸時代の中ごろ、幕府や大名ではなく地元の庶民の寄進で約25年かけて建てられ、庶民の信仰が豪華な装飾文化を広げていった過程を示す建物だという点です。本殿拝観(700円、同伴者がいれば中学生以下は無料)を申し込むと、奥殿の彫刻を目の前で見られます。七福神が碁を打つ場面や、遊ぶ子どもたちを探してみてください。
拝観時間は平日10時〜15時、土日祝9時30分〜16時。JR熊谷駅北口から朝日バスで「妻沼聖天前」下車すぐで、無料の駐車場もあります。彫刻の見どころや門前の妻沼いなりは妻沼聖天山はなぜ国宝に?で詳しく紹介しています。
稲荷山古墳出土品:115文字が刻まれた金錯銘鉄剣
行田市のさきたま古墳群にある稲荷山古墳から、1968年(昭和43年)の発掘で見つかった鉄剣や鏡、馬具などの一括です。10年後の1978年、保存処理のためにX線で調べたところ、さびの下から金象嵌(きんぞうがん)で記された115文字が現れました。「ワカタケル大王」に仕えたヲワケという人物が、先祖の名と自らの功績を記したもので、5世紀の日本で漢字が使われていたことを示す実物として、1983年(昭和58年)にほかの出土品とともに国宝に指定されました。
この鉄剣は、展示ケースの入れ替えのため2023年9月からレプリカでの展示が続いていましたが、県の発表によると2026年2月28日から、県立さきたま史跡の博物館1階の国宝展示室で実物の公開が再開されました。新しいケースで銘文がより見やすくなったとしています。観覧料は一般200円、高校生・学生100円、中学生以下は無料。開館は9時〜16時30分(入館は16時まで)で、月曜日と年末年始(12月29日〜1月3日)は休館です。秩父鉄道の行田市駅やJR行田駅から市内循環バスで「さきたま古墳公園前」下車、徒歩約2分です。
115文字に何が書かれているのか、ヲワケは誰なのかという謎はさきたま古墳群の謎|鉄剣115文字とワカタケル大王にまとめています。
景光の太刀と短刀「謙信景光」:大宮で期間限定の公開
さいたま市大宮区の県立歴史と民俗の博物館には、鎌倉時代の終わりごろに備前(岡山県)の長船派の刀工、景光がつくった国宝が2本あります。
- 太刀 銘 景光・景政:景光と景政が嘉暦4年(1329年)に制作。武蔵武士の大河原氏が注文し、銘文には播磨国(兵庫県)の廣峯山に奉納する刀だったことが刻まれています。1954年に国宝に指定
- 短刀 銘 備州長船住景光(謙信景光):元亨3年(1323年)の作。のちに上杉謙信が持っていたことから「謙信景光」と呼ばれます。1956年に国宝に指定
どちらも常設展示ではなく、期間を区切った公開のときだけ実物が並びます。これまでの公開は、2022年が10月4日〜12月4日、2024年が1月30日〜3月3日、2026年が1月27日〜3月1日(博物館の公式Xによる)と、年によって時期が違います。2027年の日程は、2026年11月2日時点で博物館のサイトにはまだ出ていません。公開中は常設展の観覧料(一般300円)で見られます。開館は9時〜16時30分(受付は16時まで)、月曜日は休館です(祝日などは開館)。
「謙信景光」は2017年に、ゲーム「刀剣乱舞ONLINE」の刀剣男士のモチーフになりました。2024年の公開ではゲームとのコラボ企画が行われ、2026年の公開でも博物館の公式Xでコラボが案内されました。博物館は東武アーバンパークラインの大宮公園駅から徒歩5分。駐車場は大宮公園との共用で15台と少ないので、電車が便利です。
慈光寺経:寺では陶器に写した複製を見られる
ときがわ町の山あいにある都幾山慈光寺は、坂東三十三観音の第九番札所として知られる古い寺です。寺の案内によると、国宝「慈光寺経」は平家納経などと並ぶ鎌倉時代初めの装飾経の名品で、元久3年(1206年)、太政大臣藤原良経の急な死を後鳥羽上皇が悲しみ、中宮の宜秋門院を中心に営まれた「一品経」の供養と伝えられています。一品経は、法華経の各章(品)を一人ひとりが分担して書き写すもので、経文の紙を絵や装飾で美しく飾った、華やかな写経です。
ただし実物は寺に常に展示されているわけではありません。寺では本堂(阿弥陀堂)と般若心経堂に、経の一部を陶器に写した複製が置かれています。寺のサイトによると、寺の宝物は東京国立博物館や県立歴史と民俗の博物館などに貸し出されています。2015年には修理の完了を記念して、県立歴史と民俗の博物館の特別展で全巻が初めて公開されました。実物を見たいときは、博物館の展覧会情報をこまめに確かめるのが近道です。慈光寺の住所は埼玉県比企郡ときがわ町西平386、電話0493-67-0040。寺の案内では年中無休で、納経・御朱印の受付は9時〜16時(12時〜13時は昼休み)です。
注意 刀2本と慈光寺経は、実物を見られる期間が限られます。鉄剣も展示替えや臨時休館があります。出かける前に、各施設の公式サイトで展示中かどうかを確かめてください。
国宝を1日で回るなら?
聖天堂と金錯銘鉄剣はどちらも県北にあり、熊谷市と行田市は隣り合っています。いつでも実物を見られる2件を1日で回るなら、次の順番が無理がありません。
- 9:00県立さきたま史跡の博物館
開館と同時に国宝展示室へ。鉄剣を見てから稲荷山古墳に登ると、出土した場所の大きさが実感できます
- 昼熊谷方面へ移動
車なら古墳公園の駐車場から妻沼へ。電車なら熊谷駅を経由してバスで妻沼聖天前へ
- 午後妻沼聖天山の本殿拝観
土日祝は16時まで、平日は15時までなので早めに。門前で妻沼いなりを
刀の公開期間なら、大宮の県立歴史と民俗の博物館で景光の2本の刀も見られます。こちらは大宮駅から2駅なので、別の日に氷川神社の参拝と組み合わせると回りやすいでしょう。
国宝と重要文化財はどう違う?
文化財保護法では、国が指定した重要文化財のうち、世界文化の見地から価値が高く「たぐいない国民の宝たるもの」を国宝に指定します。つまり国宝は、重要文化財の中からさらに選ばれたものです。埼玉県内では、聖天堂が1984年に重要文化財になり、2012年に国宝へ格上げされました。慈光寺には国宝のほかにも、関東で最も古い写経として知られる大般若経など、重要文化財が残っています。
よくある質問
埼玉県の国宝建造物はいくつある?
歓喜院聖天堂の1件だけです。2012年の指定で、県内で初めての国宝建造物になりました。
金錯銘鉄剣はいつでも見られる?
2026年2月28日から県立さきたま史跡の博物館で実物を公開しています。休館日(月曜日など)と、展示替えによる臨時休館には注意してください。
謙信景光は次にいつ見られる?
2022年は秋、2024年と2026年は1〜3月に公開されました。2027年の日程は、2026年11月2日時点で博物館のサイトにはまだ出ていません。県立歴史と民俗の博物館の公式サイトかSNSで確かめてください。
出典:埼玉県「埼玉県内の国・県指定等文化財」(令和8年10月21日現在、2026年10月28日掲載)、埼玉県オープンデータ「指定文化財一覧」、埼玉県「国宝『金錯銘鉄剣』の実物を2年半ぶりに公開します」(2026年2月5日発表)、県立さきたま史跡の博物館 公式サイト、埼玉県「国宝太刀・短刀の公開」報道発表資料(2022年9月29日)、県立歴史と民俗の博物館「休館日・開館時間・観覧料」「交通案内」「特別展 慈光寺」・公式X、インターネットミュージアム「国宝太刀・短刀の公開」(2024年)、都幾山慈光寺「慈光寺について」「慈光寺の宝物」、文化遺産オンライン「歓喜院聖天堂」、熊谷市「妻沼聖天山」、文化財保護法 第27条。確認日:2026年11月2日

