最も閲覧数が多い人気コンテンツ「アクセスランキング」

日本一の川幅はなぜ鴻巣に?|荒川2537mの理由

日本一の川幅はなぜ鴻巣に?鴻巣市・吉見町の荒川。堤防の間2,537m、ふだんの流れ約30m。洪水をためる広い河川敷の断面イラスト 歴史・文化・雑学

鴻巣市と吉見町の間を流れる荒川には、「川幅日本一 2,537m」という大きな標柱が立っています。ところが、そばの御成橋を渡っても、見えるのは田んぼと畑ばかり。肝心の川の流れは、橋を渡り終える少し前にやっと現れ、その幅はわずか30mほどです。なぜここが「日本一」なのか。答えは川幅の測り方と、荒川が背負ってきた洪水の歴史にあります。

この記事の結論:川幅日本一は、吉見町大和田と鴻巣市滝馬室の間(御成橋付近、河口から約62km)の2,537m。ここでいう川幅は水が流れている幅ではなく、両岸の堤防と堤防の間の距離です。荒川はふだんの流れの外側に広い河川敷を持ち、大雨のときはそこに水を一時的にためて、下流の東京や埼玉の町を洪水から守ります。だから中流のこのあたりが、河口付近の3倍以上も広くなっているのです。

荒川の川幅の測り方。堤防と堤防の間が川幅2,537mで、洪水のときは計画高水位まで水が来る。河川敷には田畑・花畑・グラウンドがあり、ふだんの流れは約30m。荒川は中流がいちばん広く、中流(鴻巣・吉見)約2.5km、河口付近約0.75kmで中流は河口の3倍以上。広い河川敷と横堤で洪水を一時的にため下流の町を守る。1910年の大洪水(堤防決壊178か所)を受け大正7年〜昭和29年に改修
スポンサーリンク

川幅日本一はどこ?標柱と認定地点

国土交通省の荒川上流河川事務所によると、河川敷を含めた両岸の堤防の間を川幅とした場合、全国で最も長いのが吉見町大和田と鴻巣市滝馬室の間、御成橋のあたりで、その幅は2,537mです。平成20年(2008)2月の同事務所の調査で確認されました。

「川幅日本一」の標柱は、荒川の左岸、御成橋のたもと(鴻巣市滝馬室)に立っています。直径71cm、高さ5mの大きな柱です。ただし、実際に2,537mになる地点は、標柱から630mほど上流、河口から62km付近です。県道27号(東松山鴻巣線)を走ると、吉見町側と鴻巣市側の両方に「川幅日本一」の看板が見えます。

スポンサーリンク

川幅2,537mなのに、なぜ川は30m?

理由は「川幅」の決め方にあります。ここでいう川幅は、川が増水して堤防が耐えられるぎりぎりの高さ(計画高水位)まで水が来たときの、左右の堤防の間の距離です。ふだん水が流れている部分(低水路)はそのごく一部で、残りは堤防の内側に広がる河川敷。そこには田畑やグラウンド、花畑が広がっています。

川幅(堤防と堤防の間)2,537m(日本一)
ふだんの水の流れ約30m
割合ふだんの流れは、堤防間の約85分の1

つまり、ふだん見ている川は、本当の「川」のほんの一部にすぎません。堤防から堤防までの約2.5kmすべてが、洪水のときには川になる場所なのです。

スポンサーリンク

なぜ中流がこんなに広い?洪水をためる「天然のダム」

川はふつう、河口に近づくほど幅が広くなります。ところが荒川は逆で、いちばん広いのは中流です。国土交通省の資料では、鴻巣市と吉見町の間(河口から62km地点)の約2.5kmに対し、河口付近は約0.75km。中流のほうが3倍以上も広いのです。

この広い河川敷には、洪水を一時的にためる「遊水」の役割があります。大雨で川の水が増えると、水はまず広い河川敷に広がってたまり、下流に一気に流れ込むのを防ぎます。下流には東京をはじめとする大都市が広がっているため、中流で水を受け止めることが、たくさんの人の暮らしを守ることにつながります。

河川敷には、川の流れと直角に伸びる「横堤(よこてい)」という堤防もいくつも築かれています。横堤は本来の堤防から川の中央に向かって直角に突き出た堤防で、河川敷を流れる水の勢いを弱め、河川敷に水をためて下流の負担を軽くします。吉見町には北吉見横堤や東吉見第2号横堤などがあり、平成19年(2007)の台風9号のときにも、河川敷に水がたまる様子が記録されています。この台風では、熊谷の観測地点で過去最高の水位を記録しました。

きっかけは明治43年の大洪水

いまの荒川の形ができたのは、明治の終わりから昭和にかけての大工事によるものです。きっかけは明治43年(1910)8月の大洪水でした。堤防が178か所で切れ、死者・行方不明者は399人、全半壊・流出した家は約1万8千戸、浸水した家はおよそ26万戸にのぼりました。

年できごと
1629年伊奈忠治が荒川の流れを付け替える(いまの流路のもと)
1910年(明治43)8月の大洪水。堤防決壊178か所、死者・行方不明者399人
1911〜1930年下流で荒川放水路を開削(明治44年〜昭和5年)
1918〜1954年上流部(荒川放水路より上流)の改修(大正7年〜昭和29年)。川筋をまっすぐにし、堤防と横堤を整える
2008年(平成20)国の調査で、鴻巣・吉見の2,537mが日本一と確認される

大正7年から昭和29年までの「上流部改修」で、川筋をまっすぐにし、両岸に連続した堤防を築き、横堤を整えました。広い河川敷と横堤で洪水を受け止めるこの仕組みが、いまの「川幅日本一」の広さにつながっています。日本一の川幅は、洪水から下流の町を守るための広さでもあるのです。

川幅日本一を楽しむには?

広い河川敷は、ふだんは花の名所や散歩道として使われています。御成橋の下流側の河川敷では、5月にポピーが一面に咲きます。上流の吹上のあたりでは、秋にコスモス畑が広がります。標柱のある御成橋のたもとから、河川敷に広がる田畑を見渡すと、「ここが全部、川になることがある」というスケールが実感できます。晴れた日には、御成橋の上から富士山も見えます。

電車・バスJR高崎線「鴻巣駅」からバスで約4分の「馬室」で降り、歩いて約300m
車県道27号(東松山鴻巣線)の御成橋。標柱は鴻巣市側(左岸)のたもと
歩くなら河川敷は荒川堤ウォーキングコースとして、上流の吹上方面まで歩ける

鴻巣市では、この「川幅」にちなんで、幅の広い「川幅うどん」をはじめとする「こうのす川幅グルメ」も生まれました。鴻巣が「ひな人形と花のまち」になった理由はこちらの記事で、川幅うどんのお店はめん工房久良一の川幅うどんで紹介しています。

注意 河川敷は大雨のときに水につかる場所です。増水しているとき、台風や大雨が予想されるときは近づかないでください。

よくある質問

川幅日本一は鴻巣市?吉見町?

両方です。2,537mは鴻巣市側と吉見町側の堤防の間の距離なので、2つの市町にまたがっています。標柱は鴻巣市側の御成橋のたもとにあります。

本当に2.5km全部が水につかるの?

計画高水位は、堤防が耐えられるぎりぎりの水位です。令和元年(2019)の台風19号のときも、水は県道27号の高さまでは上がらなかったと報じられています。ふだんの大雨で河川敷全体が水につかるわけではありません。

2位はどこ?

国土交通省は「全国最長」としていますが、2位以下の順位表は公表されていません。

参考:国土交通省 荒川上流河川事務所/国土交通省 関東地方整備局「荒川の概要」資料/乗りものニュース「川幅日本一をまたぐ県道」/旅行読売「鴻巣」/国土交通省「関東の富士見百景 御成橋」

あわせて読みたい:実は埼玉が日本一のもの20選/埼玉と東京の県境はなぜ入り組む?|荒川のずれ

鴻巣市の関連記事

鴻巣市の最新ニュース・新店・イベント情報をもっと見る

タイトルとURLをコピーしました