行田の名物「ゼリーフライ」は、ゼリーでも、衣のついたフライでもありません。おからとじゃがいもを小判形にして素揚げし、ソースにくぐらせた、肉なし・衣なしのコロッケのような食べ物です。
この記事のポイント:名前は「小判形だから銭フライ、それがなまった」という説が広く知られ、行田市や農林水産省もこの形で紹介しています。ただ、これは確定した話ではありません。地元の豆腐店は「あれは間違い」と語っており、名付けの本当の根拠は今もわかっていないのです。
甘いのかと構えて口に入れると、広がるのはソースの香りと、おから入りならではのもちもち感。初めて聞くと首をひねる名前の話を、説の出どころまでさかのぼって整理します。

なぜ「ゼリー」?3つの説を比べると
いちばん有名なのが銭フライ説です。行田市の紹介によると、小判形から「銭フライ」と呼ばれ、「銭」がなまって「ゼリーフライ」になったといわれています。農林水産省の「うちの郷土料理」も同じ説明です。言葉の変化としては自然で、形を見れば納得もできます。
これに異を唱えるのが、埼玉新聞の2024年の記事に登場する行田のかどや豆腐店の店主です。元祖とされる店の2代目から、初代が最初から「ゼリーフライ」と名付けて売り出したと聞いたといい、銭フライ説は間違いだと話しています。ただし、初代がなぜその名を選んだのかはわからず、関係者はすでに亡くなっているそうです。
もう一つ、菓子のゼリーを揚げたものに見立てた、中身がゼリーのように柔らかいから、といった説明もあります(日清オイリオ、HugKum)。ただ、当時の資料で裏づけられた話は見当たりません。この記事としては、公的な紹介で最も広く語られるのは銭フライ説、しかし証拠で決着した話ではない、という書き方にとどめます。
いつ、誰が始めた?日露戦争とのつながり
起源として語られるのは、日露戦争(1904〜05年)です。行田にあった「一福茶屋」の店主が従軍先の中国東北地方で知った野菜まんじゅうをもとに考案した、というのが農林水産省の紹介。一福茶屋はすでに閉店していますが、夫婦がリヤカーで売り歩き、割り箸に刺して1個5円で売っていたという話が埼玉新聞に残っています。
なぜおからなのかにも、土地の理由がありそうです。かどや豆腐店では、豆腐を作るときに大量に出るおからの使い道として先代が作り始めたといいます。捨てられがちな材料でおなかにたまるおやつができれば、庶民には歓迎されたはずです。
足袋の町とどう関係がある?
広まりを後押ししたのが、行田の主産業だった足袋です。農林水産省の広報誌によると、昭和初期には足袋工場で働く女性たちのおやつとして人気がありました。手仕事の合間に安くて腹持ちがいいものを、という需要にぴったりだったのでしょう。足袋産業そのものの盛衰は行田の足袋はなぜ日本一になった?に詳しく書いています。
2017年には「足袋蔵のまち行田」が埼玉県内で初めて日本遺産に認定され、農林水産省の広報誌(2020年12月号)はゼリーフライも構成資産の一つと紹介しています。行田市は2006年ごろからB級グルメとしてのブランド化にも取り組んできました。おやつ一つが、町の産業史の一部として数えられているわけです。
「フライ」とは何が違う?
行田でややこしいのは、「フライ」という別の名物があること。行田市のページも、名前は似ていても全く違う食べ物だと念を押しています。
| 項目 | ゼリーフライ | フライ |
|---|---|---|
| 主な材料 | おから・じゃがいも | 小麦粉の生地 |
| 作り方 | 素揚げしソースへ | 薄く焼く |
| 近い食べ物 | 衣なしコロッケ | お好み焼き風 |
| 名前の説 | 銭フライ ほか | 布来・富よ来い ほか |
面白いことに、どちらも「フライ」と名乗りながら、ゼリーフライには衣がなく、フライは揚げてもいません。農林水産省のページによると、フライの名前も布の産地にちなむ「布来」、フライパンで作るから、「富よ来い」にかけた、と諸説あります。銭に富。お金にまつわる縁起の話が両方に出てくるのは偶然かもしれませんが、おやつの名前に願いを込める土地柄を想像してしまいます。
どこで食べられる?家でも作れる?
行田市内のあちこちで売られていて、店を探すなら市が公開している「フライ・ゼリーフライマップ」(行田市の紹介ページからPDFで見られます)が確実です。営業日や値段は店ごとに違うので、遠くから行く人は事前に確認を。埼玉新聞の記事に出てくる店としては、行田市本丸のかねつき堂、行田市宮本のかどや豆腐店があります。
家で作るなら、農林水産省のレシピの要点はこうです。ふかしたじゃがいも、よくこねて空気を抜いたおから、みじん切りの野菜(ニンジン、玉ねぎなど)に小麦粉と卵を混ぜ、小判形にして160度の油で揚げ、ウスターソースと中濃ソースを6対4で合わせたたれにさっとくぐらせます。学校給食に出す地域もあるそうです。
よくある質問
甘いのですか? 甘くありません。ソース味のおかずやおやつです。「ゼリー」の字面から想像する味とは違うので、そこが名前の面白さでもあります。
「まずい」という検索候補が出るのはなぜ? おから入りの独特の食感と、名前からの想像とのずれが理由として考えられます(編集部の見立てです)。味の好みは分かれるので、まず1個、揚げたてを試すのがおすすめです。
通販で買えますか? 2026年11月4日に楽天市場を検索した範囲では、食品としての扱いは見つかりませんでした。現地で食べるか、家で作るのが近道です。
出典(確認日:2026年11月4日)
- 行田市「ゼリーフライ」
- 農林水産省「うちの郷土料理 ゼリーフライ」「フライ」、広報誌aff 2020年12月号「ふるさと給食自慢」
- 埼玉新聞「ゼリーじゃないのになぜ「ゼリー」?」2024年3月31日
- 全国学校栄養士協議会「ゼリーフライ」
- 日清オイリオ「埼玉県(行田市)ゼリーフライ」、HugKum(2025年4月17日)
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