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十万石まんじゅうのCMはなぜ「うまい、うますぎる」?|棟方志功との関係

米粒形のまんじゅうと、うまい、うますぎると映るテレビ画面を描いた図 歴史・文化・雑学

3行でわかる「うまい、うますぎる」

  • このフレーズは、版画家の棟方志功が十万石まんじゅうを食べて言った「うまい、行田名物にしておくにはうますぎる」が元になっている
  • 出会いは1953年。棟方は包装紙の「まんじゅう姫」の絵と題字も描き、どちらも今も使われている
  • テレビCMはテレビ埼玉の開局(1979年)のころから長く流れ続け、埼玉県民なら誰もが知るフレーズになった

十万石まんじゅうのCMの「うまい、うますぎる」は、世界的な版画家・棟方志功の言葉から生まれました。まんじゅうを食べた棟方が「うまい、行田名物にしておくにはうますぎる」と絶賛し、その言葉の前と後ろを残したのが、あのフレーズです。

「風が語りかけます。うまい、うますぎる」。埼玉で育った人なら、テレビ埼玉で何度も耳にして、つい口ずさめるはずです。この記事では、行田の銘菓・十万石まんじゅうと棟方志功の出会い、包装紙と題字に込められた話、そして40年以上続くCMの舞台裏を、十万石ふくさやの公式サイトや埼玉新聞の記事をもとにたどります。

棟方志功の言葉「うまい、行田名物にしておくにはうますぎる」から真ん中を省いてCMの「うまい、うますぎる」になったことを示す図
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十万石まんじゅうはどんなお菓子?

十万石まんじゅうをつくるのは、行田市に本社を置く十万石ふくさやです。公式サイトの沿革によると、1952年(昭和27年)、創業者の横田信三さんが行田市の本町通りに「福茶屋」を開き、十万石まんじゅうを主力に和菓子づくりを始めました。1960年には株式会社十万石ふくさやを設立し、屋号を「十万石」に改めています。

名前の由来は、江戸時代に行田を治めた忍藩の石高が10万石だったことです。まんじゅうの形も、忍藩の米にちなんだ米粒形。白くしっとりした皮は、毎朝すりおろす国産のつくね芋と新潟県産コシヒカリの粉でつくる薯蕷(じょうよ)皮で、中には北海道十勝産の小豆を炊いたこしあんが入っています。

行田市の行田本店は、江戸時代後期の呉服商の店蔵と推定される建物で、2007年に国の登録有形文化財になりました。店に入ると、歴史ある蔵の中でまんじゅうを買う、という少し特別な体験ができます。

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棟方志功とはどうやって出会った?

十万石まんじゅうと棟方志功の縁は、創業の翌年、1953年(昭和28年)に始まります。公式サイトによると、棟方と親交のあった行田の書道家・渥美大童の紹介で、先代の横田信三さんが棟方のもとにまんじゅうを届けました。埼玉新聞は、渥美が棟方に師事していた縁だと伝えています。

まんじゅうを口にした棟方は、5個を一気に平らげ、6個目に手を伸ばしながらこう言ったといいます。「うまい、行田名物にしておくにはうますぎる」。行田の小さな和菓子屋のまんじゅうを、行田だけの名物で終わらせるのはもったいない。そんな最大級のほめ言葉でした。

棟方志功は青森市出身の版画家です。前年の1952年にスイスのルガノ国際版画展で優秀賞を受け、1956年にはヴェネツィア・ビエンナーレで国際版画大賞を受賞して、世界的な評価を確立していきます。十万石まんじゅうとの出会いは、ちょうど国際的な評価が高まり始めたころの出来事でした。

CMは言葉の「真ん中」を省いた:おなじみの「うまい、うますぎる」は、棟方の言葉「うまい、行田名物にしておくにはうますぎる」から、真ん中の「行田名物にしておくには」を省いたものです。省いた部分を知ると、このフレーズが「行田から全国へ」という願いを込めた言葉だったことがわかります。

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包装紙の絵と「幔頭」の字の秘密は?

棟方は言葉だけでなく、絵と文字も残しました。公式サイトの沿革によると、棟方はこのとき「まんじゅう姫」の絵を描いています。誕生秘話によると、モデルは忍城のお姫様です。この絵はいまも十万石まんじゅうの包装紙に使われています。

題字にも面白い話があります。棟方が書いた題字は「十万石幔頭」。正しくは「饅頭」ですが、棟方は「饅」ではなく、幕を意味する「幔」の字を書きました。公式サイトによると、先代が字の違いを指摘すると、棟方は全国に知れ渡ることを願ってこの字にしたと答えたといいます。埼玉新聞は、幔幕のように幅広く、長く愛されてほしいという意味が込められていたと伝えています。

包装紙のまんじゅう姫の絵と、題字「十万石幔頭」の幔の字の2つの説をまとめた図

CMはいつから流れている?

あのテレビCMが流れ始めたのは、テレビ埼玉が開局した1979年(昭和54年)のころです。埼玉新聞や東京スポーツなど多くの報道が1979年としていますが、公式サイトの沿革は1980年(昭和55年)としており、資料によって1年の違いがあります。東スポWEBは2021年、1979年の開局から放送が続き43年目を迎えたと伝えています。

CMは「風が語りかけます。うまい、うますぎる」で始まるナレーションです。渋い男性の声が、棟方の言葉を下敷きにしたフレーズを語りかけます。ナレーターの名前は、今回調べた公式サイトや報道では公表されていませんでした。

撮影の舞台裏も伝わっています。埼玉新聞(2024年)によると、CMは高校野球埼玉大会の中継で流すために急いで撮影されたもので、ロケ地は飯能市の竹寺でした。背景が寂しかったため、当時テレビ埼玉の営業担当だった関口晴彦さんがバケツで水を流し、即席の滝をつくったといいます。手づくり感あふれるこの映像が、40年以上も埼玉の茶の間に流れ続けることになりました。

長く変わらなかったCMにも、新しい試みがありました。2021年9月には、演歌歌手の市川由紀乃さんが初めてナレーションを担当した15秒版が期間限定で放送されています。

なぜ埼玉県民はみんな知っている?

十万石まんじゅうのCMが県民の記憶に深く刻まれた理由は、なんといっても、同じフレーズが長い年月流れ続けてきたことにあります。テレビ東京の「出没!アド街ック天国」も、2023年2月の「スイーツ王国埼玉」特集で十万石の行田本店を取り上げ、「昭和27年創業。名物はつくね芋と米粉で作った皮の『十万石まんじゅう』」と紹介しています。

十万石ふくさやは、埼玉県内を中心に約36店舗を構えています。2018年には日本ギフト大賞の埼玉賞も受けました。コラボ商品は50を超え、ドラマ『陸王』(2017年)や映画『翔んで埼玉』(2019年・2023年)とのコラボまんじゅうも話題になりました。十万石ふくさやは自らを「埼玉銘菓」と名乗っています。行田の名物にとどまらず、埼玉を代表する銘菓になったという意味で、棟方の言葉は現実になったといえそうです。

1952年の創業、1953年の棟方志功との出会い、1960年の株式会社設立、1979年ごろのCM開始、2007年の行田本店の登録有形文化財までの年表図

十万石まんじゅうはどこで買える?

十万石まんじゅうは、十万石ふくさやの直営店で買えます。会社概要によると、店舗は埼玉県内を中心に36店舗、群馬県に1店舗(2023年2月時点)。行田市行田20-15の行田本店は、江戸時代後期の呉服商・山田清兵衛商店の店蔵とみられる建物で、国の登録有形文化財です。日持ちは約4〜5日なので、お土産にするなら日程に気をつけましょう。

公式サイトの誕生秘話には、棟方が先代に、自分にしかつくれない菓子をつくるよう勧めたという話も紹介されています。包装紙のまんじゅう姫を見かけたら、そんな約束の話も思い出してみてください。

なお、行田市は足袋の町としても知られます。十万石まんじゅうを手に、足袋蔵の残る町並みを歩くのもおすすめです(行田の足袋はなぜ日本一になった?)。

参考資料

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