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埼玉に多い名字|「新井」さんの数が日本一なのはなぜ?

新井と書かれた表札と、水を得る場所を表す井戸を描いた図 歴史・文化・雑学

3行でわかる埼玉の名字と「新井」

  • 埼玉に多い名字の上位は鈴木・高橋・佐藤・小林。新井も県内の上位10位に入る
  • 新井さんが全国でいちばん多く住む都道府県は埼玉(約7.3万人)。ただし人口に占める割合では群馬がわずかに上
  • 新井の「井」は井戸だけでなく、川から水を汲む場所や用水路のこと。新しくできた水場の地名が名字になったと考えられ、秩父から群馬にかけて特に多い

新井さんの数がいちばん多い都道府県は埼玉県です。名字由来netの推計では、全国の新井さん約19.9万人のうち、約7.3万人が埼玉に住んでいます。新井は「新しく開いた水場」を意味する名字とされ、秩父地方から群馬県にかけての川沿いの土地に特に集中しています。

クラスや職場に一人は新井さんがいた。埼玉で育った人なら、そんな記憶があるかもしれません。この記事では、埼玉に多い名字のランキングと、新井さんがなぜ埼玉に多いのかを、名字研究家の解説や複数の名字データをもとに読み解きます。名字には国の公式な統計がないため、出典ごとの違いも正直に紹介します。

新井さんの都道府県別人数(埼玉約7.3万人、東京約3.1万人、群馬約2.4万人)と、人口に占める割合(群馬約1.29%、埼玉約1.02%)を比べた図
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埼玉に多い名字ランキングは?

まずは、埼玉県に多い名字の上位を見てみましょう。名字の数え方は出典によって少しずつ違うため、3つの代表的なデータを並べました。

順位名字由来net(2026年4月)森岡浩氏の県別ランキング日本姓氏語源辞典(人名力)
1位鈴木鈴木鈴木
2位高橋高橋高橋
3位佐藤佐藤佐藤
4位小林小林小林
5位新井斎藤田中
6位田中田中新井
7位渡辺渡辺渡辺
8位中村新井中村
9位加藤中村斎藤
10位吉田加藤加藤

1位から4位の鈴木・高橋・佐藤・小林は、3つのデータすべてで同じ顔ぶれです。全国でも多い名字が並ぶなか、目を引くのが新井です。全国順位は80位(名字由来net)から102位(日本姓氏語源辞典)と、決して上位の名字ではありません。それなのに、埼玉県内では5位から8位に入っています。全国ではそれほど多くないのに、埼玉ではトップ10に入る。ここに埼玉の名字の大きな特徴があります。

日本姓氏語源辞典は、その地域で特によく見かける名字を数値にした「その地域と言えばこの名字」という指標も出しています。埼玉県の1位は新井。続いて小林、斎藤、関根、金子、清水、栗原、関口と、埼玉らしい名字が並びます。

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「新井」さんはどれくらい埼玉に多い?

名字由来netの推計(2026年4月)によると、新井さんは全国に約19.9万人。都道府県別では埼玉が約7.3万人で最も多く、2位の東京(約3.1万人)、3位の群馬(約2.4万人)を大きく引き離しています。全国の新井さんのおよそ3人に1人以上が、埼玉に住んでいる計算です。

ただし、「日本一」には注意が必要です。人口に占める割合で比べると、群馬が約1.29%、埼玉が約1.02%で、群馬のほうがわずかに上になります。群馬県内では新井が4位の名字です。人数なら埼玉、割合なら群馬。新井さんの本場は、埼玉と群馬にまたがる地域だと言えます。

名字には「公式な統計」がない:名字研究家の森岡浩さんは、日本では名字の数や人数についての公的な全数調査は行われておらず、いろいろな推計値が出されている状態だと説明しています。この記事の数字も、電話帳などをもとにした推計です。データの時期や、斎藤と齋藤を同じ名字として数えるかどうかで結果が変わるため、順位や人数は出典によって違います。「おおよその傾向」として読んでください。

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埼玉のどこに新井さんが多い?

新井さんは、県内どこにでも同じように多いわけではありません。森岡浩さんは、新井は埼玉県の秩父地方から群馬県の東部を経て、栃木県の西部にかけて集中しており、秩父市では最も多い名字だと解説しています。

日本姓氏語源辞典の市町村別ランキング(合併前の旧町村の区分を含む)を見ると、新井が1位の地域は、秩父市のほか、皆野町、寄居町、神川町、旧江南町(いまの熊谷市)などです。熊谷市や長瀞町では2位、深谷市や小鹿野町では3位に入ります。荒川の上流、秩父の山あいから県北にかけての地域に、新井さんが集まっている様子がわかります。名字由来netの推計では、秩父市の新井さんは約7,600人で、全国の市区町村で最も多く、市民のおよそ8人に1人(約12.2%)にあたります。皆野町(約11.0%)、小鹿野町(約9.9%)も高い割合です。一方、人数だけなら川越市(約4,200人)も多く、県内の都市部にも新井さんは広く住んでいます。

新井が町の名字で1位の秩父市・皆野町・寄居町・神川町・旧江南町と、秩父市では約8人に1人が新井さんであることをまとめた図

なぜ「新井」という名字が生まれた?

新井という名字の意味を考えるうえで鍵になるのが、「井」という字です。森岡浩さんによると、昔の「井」は井戸だけでなく、川から水を汲む場所や田に水を引く用水路など、暮らしに必要な水を得る場所を広く指していました。新井は「新しくできた井」、つまり新しい水場のことです。辞書を見ても、『日本国語大辞典』は「新井(さらい)」を、井戸替え(井戸の水をくみ出して掃除すること)をして新しくなった井戸やその水と説明しています。

森岡さんは、暴れ川だった利根川は氾濫のたびに流れが変わり、水を汲む場所や用水路もそのたびに変わったため、新しくできた「井」が「新井」と呼ばれ、利根川流域に新井が多いと説明しています。新しく水場が開かれた土地が「新井」という地名になり、そこに住んだ人々が名字として名乗るようになった。新井という名字は、川とともに生きた人々の暮らしから生まれたと考えられます。

家系の伝承としては、上野国新田郡新井(いまの群馬県太田市)を起源とし、清和源氏新田流とする説があります(名字由来net)。ただ、日本姓氏語源辞典によると「新井」という地名は深谷市や北本市など各地にあり、新井さんの先祖が一つの家にさかのぼるわけではありません。各地の「新しい水場」から、それぞれの新井さんが生まれたと見るほうが自然でしょう。

森岡さんは利根川流域に新井が多い理由を、川の流れの変化で説明しています。秩父の荒川流域に多い理由までは、今回調べた資料では触れられていませんでした。ただ、秩父や県北もまた、川から水を引いて土地を開いてきた地域です。群馬とのつながりも深いこの一帯に新井さんが集まっているのは、同じような暮らしの積み重ねがあったからではないか、と推測できます。

ほかにも埼玉らしい名字は?

埼玉には、新井のほかにも「全国でいちばん埼玉に多い」名字がいくつもあります。名字由来netの推計(2026年4月)から、特徴的なものを紹介します。

代表格が関根です。全国の関根さん約9.8万人のうち、約3.7万人、およそ37%が埼玉に住んでいます。栗原、関口、福島も、人数では埼玉が全国一です。浅見は全国約3.8万人のうち約1.7万人が埼玉です。横瀬町では名字由来netの比率で約12.8%を占め、日本姓氏語源辞典の町別ランキングでも1位の名字です。

数は少なくても、埼玉への集中度が高い名字もあります。熊谷市に多い鯨井(くじらい)は全国の約6割が埼玉在住で、岩槻区に多い遊馬(あそま・あすま)も約3分の2が埼玉に住んでいます。秩父地方には、全国的には珍しい名字も見られます。強矢(すねや)は小鹿野町に同じ名前の地名が残り、北条軍がこの地で武田軍を防いだことに由来するという伝承が紹介されています。甲斐国(山梨県)の武田氏の流れとされる逸見(へんみ)は、全国で最も多く住む市区町村が秩父市です。

関根・浅見・鯨井・遊馬・強矢・逸見など埼玉に集中する名字を紹介した図

一方で、「埼玉に多い」と言われながら、実は全国一ではない名字もあります。金子は埼玉に約4.7万人いますが、最新の推計では東京(約4.9万人)がわずかに上回っています。

名字は、その土地で人々がどう暮らしてきたかを映す鏡のようなものです。新井さんが秩父から群馬にかけて多いのは、川の水を引いて土地を開いてきた歴史の名残なのかもしれません。身近な新井さんや関根さんに、ルーツの話を聞いてみるのも面白そうです。

参考資料

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