この記事で2014年に取材した上尾市の「オートパーラー上尾」は、国道17号沿いで約60年続いたレトロ自販機の店でしたが、2025年7月末に閉店しました。2026年10月時点で、埼玉県内で今もレトロ自販機が動いているスポットは確認できていません。
2014年6月の取材|昭和の自販機が現役だったころ
キラキラとした名所より、なかなか日の目をみない所にこそ本当のよさがあったり、地域の味は隠れていたりするもの。
そんな、ちょっと日陰な埼玉をご案内。
誰が言ったか「埼玉ブルース」はじまり、はじまり。
さて、A級、B級、ゲテモノ級……
この世にグルメは多々あれど、ご当地グルメと言う響きほど心躍らせるものはないのです。たぶん。
ここ埼玉にも有名どころがいくつかありますが、それらを差し置いても食べるべき昭和グルメがあると聞いて、今回はオートパーラー上尾店さんにお邪魔して来ました。

やや怪しげに24hを謳う看板の横に誇らしげな食堂の文字を発見!
これは期待出来るはず!
と、逸る胸を押さえつつ、早速中に入って行こうと足を踏み入れたものの……

!?

揃いも揃った往年の名作ゲーム機器に紛れて、突如として現れた謎の一角ががが!
期待していたくたびれレストランからはちょっと目算が外れてしまいましたが、
これぞうっかりハプニングから運命の出会いを果たすという大映ドラマさながらの求めていたTHE昭和のテイストというもの。
既に最高に吹っ切れたテンションを落ち着かせつつ、店内を見渡してみると、

なかには、様々な自販機があって、例えばこんな感じの昭和の遺物が盛りだくさん!
何がスゴイって、こんなんがまだまだ現役で稼動してるってことに、感涙を禁じ得ません。

ということで、早速購入してみることに。
本当に動くのか?という一抹の不安のもと、お金を入れて、ボタンを押すと、ちょっとした轟音とともにランプが点滅しはじめて、それにテンション上げられること十数秒、チョッ早で出来上がって来ましたよ!

出来上がったトーストを取り出そうとして、思わず昭和の暗部に邂逅……。
ゆとり世代だのゆるきゃらだのと言われて久しい昨今ですが、今日ほど自分がゆとっていると感じたことはありません。
ますます上がるテンションに駆られながら勢いよく手を突っ込んで、見事に手をやられました。
取り出し口のゆるさに似合わず、このトースト、結構な殺傷性。

そして、本日のハイライトは、何と言っても、このうどん/そば!
実は、この自販機、昔は珍しくもなかったらしいんですが、今は老朽化で撤去されていたり、
それを扱っていた店舗自体も閉店していたりで、こうしてきちんと稼動しているのは埼玉でもかなりレアなのらしい。
特に、ここは都内から40kmあまりという立地もあって、いわゆる昭和マニアの方がよく来られるのだとか。

「はし・やくみ」と書いてあるポケットから、割り箸と七味を引っ張り出して、

出来上がったばかりのところを、すかさず取り出す。
先程のカップ麺とは違い、そのまま器に入って出て来るということで、中身が飛び散って空のどんぶりが出て来るというハプニングを期待しましたが、安心設計のため、汁一滴のとりこぼしもないという返り討ちに遭いました。

すべての自販機を堪能し尽くしたところで、いざ実食!
思った以上に緑が足りないが、これこそがまさに昭和の味というやつか……
何もかも皆懐かしい。

トースト・サンドの中身は、ハム&チーズとコンビーフの二種類。
これと同種の自販機は全国津々浦々にいくつかあれど、コンビーフ味があるのは、ここだけなんだとか。
だだ上がりのテンションで食べた味は……あれ、普通においしい。
でも、別にアツアツってほどではないんだけどね。あの包み紙の熱さは一体何だったんだ?的なね。

そして、主役のうどん! そばも選べましたが、埼玉県民なら、ここはうどんを押したいところ。
この写真には写っていない奥底には、ほかにワカメとナルトも入ってて、結構具だくさんなのです。
しかし、ご覧のように掻き揚げは汁にひたひた&ぐだぐだの結構残念クオリティ。
あんなに秒速で作られた割に、どういうこと? 一体どうすればここまで掻き揚げがドロドロに!?
と質問が頭をもたげはしたが、考えてみたら、うどんもコシのないタイプだし、あえて狙っているのかも知れない。
そう言えば、さっきのトーストもやけに薄かった。
まさか昭和を懐かしむ客層の歯への負担まで気遣ってくれていたとは……
その優しさに全米ならぬ全埼玉県民は涙してもいいと思う。(※ただし、オーバー27歳。昭和だけに。)

しつこいほどに繰り返し「昭和」「昭和」と連呼しましたが、むしろ平成世代には新しいのかも知れない。
こういう加工肉も意外と悪くないなと思いながらトースト・サンドを頬張る横で、おっかなびっくり「そば」のボタンに手を伸ばす高校生を見て、なんとなくそう思った。
【今回取材させて頂いたオートパーラー上尾様】
埼玉のレトロ自販機スポットのその後
うどん・そばやトーストを自販機で売る「オートレストラン」は、かつて埼玉県内にもいくつもありました。埼玉ブルースで取材した3か所は、いずれも閉店しています。
| スポット | 場所 | その後 |
|---|---|---|
| オートパーラー上尾 | 上尾市久保(国道17号沿い) | 2025年7月末に閉店 |
| オートレストラン鉄剣タロー | 行田市下忍(国道17号バイパス沿い) | 2020年5月31日に閉店。自販機は神奈川県相模原市の店に引き取られた |
| オートパーラーまんぷく | 久喜市栗橋東 | 閉店 |
オートパーラー上尾の閉店は、地元紙でも「埼玉県内唯一」のオートレストランの閉店として伝えられました。鉄剣タローは1988年の開業から32年続いた店で、閉店後、うどんなどの自販機は相模原市の「中古タイヤ市場」に移って今も使われていると報じられています。
当時の取材記事は、自販機グルメ 行田市の鉄剣タロー【埼玉ブルース第2回】、懐かし自販機 久喜のオートパーラーまんぷく【埼玉ブルース第3回】で読めます。
出典:東京新聞「国道のオアシス ありがとう60年 埼玉県内唯一・上尾のオートレストラン閉店」、号外NET 上尾・桶川、熊谷経済新聞(鉄剣タロー閉店)、相模原町田経済新聞(鉄剣タローの自販機のその後)

