戸田市の企業が道路陥没の予兆を検知するシステムを共同開発、八潮の事故受け
戸田市に本社を置くキャンベル・サイエンティフィック・ジャパン株式会社(CSJ)が、株式会社日水コンとともに「道路陥没予兆検知システム」を共同開発しました。2025年1月に八潮市で発生した道路陥没事故をきっかけに社会課題となっている、下水道管に起因する陥没を、地中のセンサーで早い段階からとらえようという技術です。
なぜ今、このシステムが必要なのか
2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を契機として、下水道管渠に起因する道路陥没事故の防止が社会の重要な課題となりました。事故を受けて実施された国土交通省主導の全国特別重点調査では、「緊急度Ⅰ(1年以内に対策が必要)」「緊急度Ⅱ(5年以内に対策が必要)」とされる箇所が数多く確認されています。
一方で、管渠の改修には調査・設計、予算措置、発注手続きなどに一定の期間がかかります。そのため「緊急度Ⅰ」の箇所であっても国が求める対応がすぐには難しい場合があり、改修が完了するまでの間、暫定的に安全を確保する手段が求められていました。今回のシステムは、まさにその「改修までのつなぎ」を担うものです。
どうやって陥没の予兆をとらえるのか
レーダー波が届かない地中深部の下水道管に対し、管の近くの地中に埋めた圧力センサーで土圧・間隙水圧の変化を計測します。空洞がセンサーの設置位置まで到達したときに生じる圧力変化から、道路陥没につながる恐れのある空洞の発生・成長を検知するしくみです。
具体的には、管渠の局所的な損傷が判明している箇所で、管の上方1〜2メートル程度離れた位置にセンサーを設置します。管への土砂流入にともなって拡大しながら地表に向かって移動する空洞を、地表が陥没する前の段階でとらえることを狙っています。
なお「八潮市で発生した道路陥没事故に関する原因究明委員会報告書」(2026年2月19日)では、空洞の発生から地表面の陥没までに年単位の期間を要した可能性が示されています。時間的な余裕があるうちに気付ければ、対応の選択肢は広がります。
システムの3つの特長
- 地中深部の土圧・間隙水圧を計測…管渠の近くに設けたボーリング孔に圧力センサーを埋設し、地表からの調査が難しい深い場所の変化をとらえます。
- 長距離のケーブルを用いた計測…弦の張力変化による振動周波数変化を計測する「バイブレーティングワイヤー(振動弦)方式」の圧力センサーを採用。ノイズの影響を受けにくく、センサー検出部と変換器の距離が長くても計測できます。
- LTE通信・独立電源による遠隔監視…計測データは歩道上などに設置した変換器と通信機器を介し、LTE通信でクラウドへ無線送信されます。各装置は太陽光発電と蓄電池を組み合わせた独立電源で動作します。クラウド上では予兆検知アラートや計測値のトレンド、機器の死活監視を遠隔で管理できます。
2社の役割分担と特許出願
CSJは、バイブレーティングワイヤー方式センサーと独自の信号変換技術を用いた変換器の提供、計測・通信システムの構築、現場側のデータ収集・通信装置の開発を担当しました。日水コンは、道路陥没メカニズムに基づく計測箇所の設定、センサーの設置・施工方法の検討、土層実験およびクラウド側の監視システム構築を担当しています。
2社は「道路陥没予兆検出システムおよびその製造方法」について共同で特許を出願しました(特願2026-039634)。また国立研究開発法人土木研究所内の実験土層を用いて空洞の発生・成長を再現し、空洞の成長にともなう圧力変化をセンサーで計測できることを確認済みです。
あくまで「補完的な監視」であることも明記
本システムは、管渠の改修が完了するまでの期間における補完的な監視を目的とするもので、道路陥没の発生を確定的に予測・防止するものではないとされています。計測結果を踏まえた点検や通行規制などの対応は、道路管理者および下水道管理者が現地状況などを踏まえて判断します。
今後の展開
今後は実験土層で得られた成果を踏まえ、実際の道路での実証を通じて、地下水変動時や地震発生時のセンサーの挙動などを確認していく方針です。あわせて、空洞調査における貫入試験の活用など、施工コストのさらなる低減につながる施工方法も検証していきます。
CSJは、この技術を道路陥没対策にとどめず、橋梁、トンネル、擁壁、斜面、ダム、港湾、鉄道、エネルギー施設など社会インフラ全般の予兆監視へ広げていくとしています。
企業情報
まとめ
県内で起きた事故をきっかけに、県内の企業が予防のための技術を形にしました。毎日通る道路の下で何が起きているかは目に見えませんが、こうした監視技術が広がることで、暮らしの安心につながっていくことが期待されます。


