行田グルメの大定番 ゼリーフライとフライ【埼玉ブルース第22回】

埼玉ブルース

誰が言ったか知らないが、訪ねてみれば確かに感じる魅力のご当地をさすらう「埼玉ブルース」。

今年も大好評を博しながら惜しまれつつその幕を閉じたB-1グランプリ。我が埼玉県から堂々参戦した
行田ゼリーフライの健闘を讃えて、実際に舌鼓を打つべく、今週は行田市をぶらりして来ました!

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とは言え、この「埼玉ブルース」が行田市を訪れるのは、今回で二度目。
以前さきたま古墳群をご紹介した際に触れたように、我らが埼玉県名発祥の地でもある
この場所には古くからの歴史的遺産が数多く残されているのです。

その代表とも言うべき忍城は、かつて室町時代に武士団を抱え、現代においてはランドマークと
呼ぶに相応しいまさに行田市民の心のオアシス。
昨今では日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞した映画『のぼうの城』の舞台となったことでも話題を集め、
この日もたくさんの観光客で賑わっていましたが……残念ながら偉い人から掲載の許可が下りなかったので、
今日のところはモザイクの上から失礼します。

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実は、今回はこうしたメインの見どころ撮影が一切NGとのこと。埼玉県各地の魅力を
お伝えするこの連載で写真が撮れないとかそんなの翼をなくした鳥、PCを失ったマウス、
カレーを掛けてもらえなかったライスと同じ……って、それもうただのライスやんけ!

どうしたらいいのかと途方に暮れつつ下を向きながら鬱々と歩いていた目に飛び込んで
来たのは、、、なんと8枚切りのパン…だと…?

恐る恐る持ち主らしい親父さんに声を掛けてみると、この池の鯉達に餌をあげに来ているのだそうな。
是非その瞬間を見せて欲しいとお願いした矢先に放り込まれた食パンには、

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おおっ、たくさん鯉が群がってる!

そのあまりの食い付きっぷりは、親父さんに賞味期限切れの食パンから、まだ買ったばかりだと
言うスイス・ロールにさえ手を伸ばさせてしまうほど。まさかの生クリーム入りにも躊躇なく
喰らい付く鯉の必死な形相を見ながら、これまでどれくらいの餌をあげたのかを訊いてみると、
「そんなの覚えてない」とのつれない答えが。
そうだよね、今まで食べたパンの数なんて覚えてる訳なかったよね。
ちなみに、ほかの餌って食べないの?

「基本はなんでも食べるかな。でも、昔いくらをあげた時は無視されたけど」って
言うけどさ、親父さん、そりゃ食べないよ……鯉にしてみりゃ共食いもいいとこだもの……。

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そんな愉快な親父さんは行田市の地元ティで、聞けば大体週一程度のペースで
散歩がてら鯉を構ってると言う。行田グルメを堪能しに来た旨を話すと、
ここからすぐ近くにおいしいお店を知っていると言うので、なんだかんだ案内してもらうことに。

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学生時代は野球部員だったと言う親父さんと清原元選手の離婚問題はじめ時事問題で
異様な盛り上がりを見せる道中。周囲に大道路が連なり合う中およそ喧騒を忘れた
避暑地の余裕さえ匂わせる景色を楽しみながら、遠足のようにてくてく歩く。

ちなみに、その途中には行田市切っての観光スポットのふたつ名を取る水城公園がありましたが、
ここもご多分に漏れずNGにつきモザイク加工で失礼します。

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そして歩き続けること十数分、こちらが親父さんイチ推しの深町フライ店さん。
なんでもこの界隈切っての老舗には県内外から著名人を含めてたくさんのお客様がいらっしゃるそう。

数十年前からの看板娘こと87歳のお母さんに、このお店を撮影してもいいかとお訊ねすると、
「うちは○HKも日○レもお引き取り頂いてるんだよ」とのこと。
「ただし、私が気付かないうちに写真を撮るならしょうがないけどね」と言いながら
目を瞑ってくれるお母さんの、その温もりティが半端ない。
この看板をして漂うクオリティの高さも半端ありません。

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折角なので調子に乗って、「作っているところも見せてください」とお願いしたら、
こちらも撮らせて頂けちゃいました☆ここの屋号にもなっている”フライ”は、
件のゼリーフライと双璧を成す行田グルメの大定番なのだとか。
その見た目は所謂揚げ物とは一線を画すようなので、「いつ油に浸すんだろう?」
との疑問にドキをむねむねさせつつ待っていたものの、

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なんと食卓に出された完成品は……あれ、これってアレに似過ぎじゃね? 

お皿に並んだ外見は、何故か明らかに粉モノのそれ。二種類ある味付けは、
奥手側が親父さんのソース味で、手前側がお母さんお勧めの醤油ver.プロトタイプ。
いつも食べ慣れた通ともなれば、さらにここに一味を掛けるのが常識だそうで、
早速振り掛けて頂きます。

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こちらのフライ、もともとは”富が来たる”が語源だとのこと。その昔、
一大産業として栄えた足袋作りの工場で働く女工さん達が忙しい合間を
縫って食べたのが由来だとはwikipediaさん談。

実際に口に運べば、舌の上に広がるのは誰もが食べやすい優しいお味。お好み焼きに似ていますが
それほどボリューム満点でなく、大阪名物のイカ焼きほど歯に負担も掛からないまさに
老若男女に適したおやつと言えましょう。
どうしてとは言えないがなんとなく癖になる、これにはリピーターの存在も納得です。

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先程のお母さんのお嬢さんこと二代目看板娘さんから、これまた通ならではの食べ方を教えて頂くと、
そこに差し出されたのは……なんとお酢!?

おっかなビックリたれ瓶を振り掛けると、適度な塩分にほど好い酸味が加わって、
これはめちゃくちゃ箸が進む!しかし、気が大きくなって掛け過ぎると、
衣が薄い分だけ取り返しが付かないので、そこは注意が必要です。
ひたひたにしちゃったところで、それはそれでおいしかったけどね。うん。

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おいしい行田フライを作ってくれたお母さん達に別れを告げて、
次なるグルメを探しに再び行田市街へ。既に暗がりに包まれつつある中
さらに親父さんにお付き合い頂いて、お目当てのゼリーフライ店を目指します。

この交通安全の垂れ幕に描かれているのがそれぞれフライとゼリーフライを模した
ゆるキャラなんですが、これがマジでユル過ぎる。

こんなユルいにも程がある連載の片隅から申し上げるのもなんですが、
まさにゆるキャラの鑑です。

守りたい、この笑顔。あやかりたい、このユルさ。

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お伺いしたのは国道125号線沿いにひっそりと佇む行田ゼリーフライ本舗たかおさん。

店名に銘打たれる看板メニューは、その頂点に輝き見事グランプリを獲得した
ほどのお味と言うことで、早速ご相伴に預かると、

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あれ……これって、ただのコロッケじゃ……?

それもそのはず、このゼリーフライは別名おからコロッケと呼ばれているらしい。
えっ、これってゼリーの揚げ物じゃないんだ!?

思わず度肝を抜かれるものの、「はじめて食べた人は皆そう言うよ」と
お店の大将は余裕の笑顔。はじめて食べて驚いて、以降はおいしさに惚れてリピーターになると
言うのも頷けるおいしさです。

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そもそもゼリーフライは、日露戦争下で盛んに食べられていた野菜コロッケに
その端を発すると言われているよう。名前の語源は諸説あるものの、その
小銭のようなかたちから”銭フライ”と呼ばれていたのが転じてゼリーとなったとは
行田市観光協会さん発行のパンフレット談。

実際に揚げる前の”生小銭”を見せて下さった気前のいい大将は、奥様と二人三脚でなんと
一度に数百個ものゼリーフライを仕込まれるのだそうな。

その人気ゆえ埼玉県を飛び出して関東各地にグルメを伝導するグルメ界の伝道師(グル)とは、
まさにこのことです。

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多少予想外ではあったものの、すっかり骨抜きにされたゼリーフライ。
なんと親父さんのご相伴に預かった上に、最後はJR最寄り駅までお送り頂いた。
親父さん、その節は大変お世話になりました!

これは、親父さんが持たせてくれたたかおさんオリジナルの行田バーガー。

親切で楽しい人々とおいしいグルメと、そして、素敵な恋ならぬ鯉の居る
行田市に是非いらっしゃい。その時には、是非ともモザイクなしの風景をお楽しみになって下さいな。

【今回取材させて頂いた深町フライ店様】

火曜定休。
「いつも土・日・祝は混んでいるから、なるべく平日に来てね」とは看板娘のお母さん談

【今回取材させて頂いた行田ゼリーフライ本舗たかお様】


(月曜・第三日曜定休)

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