【前回までのあらすじ】
理想の秘密基地を求めて失踪したジョージ。
彼を探すためにジョセフ・ポルポル・レロレロの3人は「埼玉県内の面白いこと」を探す旅を始めた。
旅の途中で、ガリガリくんの当たりを交換してもらうため走り出したポルポルにそれを追うレロレロ。
そんな二人がたどり着いた場所は浦和駅前。浦和のサッカー熱にあてられ何か体を思いっきり動かしたい気分になったポルポルは、サッカーをしようと言い出した。
そんなポルポルをたしなめるようにレロレロが告げる。
「ついてきなさいポルポル。私がとっておきの場所へ案内します」
ポルポル「とっておきの場所!?」
レロレロ「ええ、そうです。その燃え上がった情熱をぶつけるのにピッタリの場所ですよ」
ポルポル「ほう、なかなか強く出たな」
(30分後)
レロレロ「着きましたよ、ポルポル。ここが私の案内したかった“別所沼公園”です!!」
レロレロ「我々は散歩がてらに歩きましたが、中浦和駅から徒歩2分と近い公園です。浦和駅からもバスで行けますね」
ポルポル「立地にも優れた憩いの場所ってわけか」
レロレロ「名前の通り、園内の半分……広さ7.9haほどの巨大な沼があるのが特徴です。なんと、この沼は100万年もの歴史を持つとも言われていまして」
ポルポル「100万年……だと……!?中国4000年の歴史を遥かに超えてやがるじゃないか。えーっと……いち、じゅう……」
レロレロ「その250倍です。両手の指を使って計算しようとしないでください」
ポルポル「むむむ、とにかくスケールがデカすぎて、あまり実感が湧かないな」
レロレロ「この沼には大蛇が住んでいてどんな日照りでも水が枯れないという伝説があるんですが、そんな不思議なお話も歴史の長さが生んだエピソードと言えますね」
ポルポル「OKOK!とりあえず、うんちくはいいから、早く公園に入ろうぜ」
ポルポル「というわけで、やってまいりました別所沼公園!はたしてレロレロはどんな面白いことを提案してくれるんでしょうか!?いや〜、楽しみですね〜」
レロレロ「急になんなんですか、そのしゃべり方は!!」
ポルポル「いや、この大きな沼を見ていたらテンション上がってきてな。ほら見てみろ、鳥たちも祝福してくれてるぜ」
レロレロ「ここには色々な種類の鳥が季節ごとにやってくるんですよ。今日はキンクロハジロしか見当たりませんが、ユリカモメやオナガガモ、アオサギなんかもくるみたいですよ。……でもポルポル、別に彼らは生きるためにここに来ているのであって別に私たちを祝福したりはしていないと思いますが」
ポルポル「いやいや、餌でもやれば祝福してくれるって!!」
レロレロ「やたらとゲンキンな祝福ですね……」
レロレロ「この木々に囲まれた沼の中にある大きな噴水を見てください。幻想的な光景だと思いませんか?」
ポルポル「ああ、確かに癒されるな。ただちょっと沼が大きすぎて近くで見れないのが残念だが」
レロレロ「鳥や魚を驚かしてはいけませんよ。ここは立派な生態系があるんですから」
ポルポル「そうだな……暴走ダメ、ゼッタイ」
レロレロ「さて、そろそろ私がここに案内した本当の理由をお話しします」
ポルポル「いや待て、レロレロ。言わずともわかってるぜ」
ポルポル「こんな大きい公園なんだ。……アレをやる気なんだろ?アレを!!」
ポルポル「ほら、サッカーしようぜ!!」
レロレロ「またそれですか!!前回の写真を流用するのもダメですよ。ゼッタイ」
ポルポル「とにかく俺はサッカーがしたいんだ!!」
レロレロ「……まあ、大きい広場がありますし、サッカーをするのも悪くないんですが、今回はやめときましょうよ。二人しかいませんしね」
ポルポル「確かに俺たちだけじゃフットサルも満足に出来ないな。でもPKならやれるぞ!!」
レロレロ「お願いですからサッカーから離れてください。私が提案したいのは“この公園ならでは”の楽しみ方です」
ポルポル「ほう、それは面白い!!言ってみたまえ、レロレロくん」
レロレロ「……調子狂いますねぇ」
レロレロ「私が提案したいのは、魚釣りです!!」
ポルポル「……ここって釣りをしても大丈夫なのか?看板に注意書きがあったような気がするんだが」
レロレロ「リールやルアーを使った釣りはダメですが、釣り自体は大丈夫なんですよ」
ポルポル「おー、そうなのか!!」
レロレロ「見てください。周りにもチラホラ釣りを楽しんでいる方がいらっしゃるでしょう?」
ポルポル「言われてみれば。ちなみにどんな魚が釣れるんだ?」
レロレロ「ヘラブナやマブナなどがいますが、目玉はなんと……ウナギです!!」
ポルポル「う、ウナギだと!?さすが“うなこちゃん”のお膝元である浦和だ。学生時代に釣り同好会で大暴れをした血が騒ぐぜぇ〜!!」
レロレロ「乗り気になってくれてよかったです。では、この釣り竿をどうぞ」
ポルポル「用意がいいな。だがその必要はないぜ!!」
ポルポル「俺にはこれがある!!」
レロレロ「……タコ糸にはさみですか。一体何をする気です?」
ポルポル「これで自作の釣り竿を作るんだ!!」
レロレロ「また、わざわざなんでそんなことを」
ポルポル「さっき自作の仕掛けで釣りを楽しむ親子がいてな。それに触発された。そもそもリールもルアーも使えないんだから、普通の釣り竿と自作の釣り竿でそこまで差は出ないだろう」
レロレロ「そうですか。ならば、私は普通の釣竿を使わせてもらいますね」
ポルポル「おう。すぐに作って追いついてやる!!」
レロレロ「……」
ポルポル「……って、もう始めてやがる!! あいつ、なんだかんだ言って、自分が釣りをしたいがためにここに案内したんだな」
ポルポル「活目せよ!!これが俺の究極釣り竿だ!!」
レロレロ「……えーっと、ただタコ糸を伸ばしただけのものに見えるんですが」
ポルポル「よく見ろ、糸の先に仕掛けがついてるだろう?」
レロレロ「究極の釣り竿どころか、もはや竿でもなんでもないですよ」
ポルポル「いやいや、シンプルイズベストという言葉を知らないのか?これなら直感的に糸を操作できるし、師匠たちが使っていた仕掛けと同じなんだぞ!!」
レロレロ「師匠!?」
ポルポル「ああ、さっき見かけた親子を勝手ながら師匠に認定させていただいた。この仕掛けでいっぱい釣っていたからな」
レロレロ「話すらしていない方を師匠扱いするのはやめてください!!いや、たしかにそれで釣ってしまう地元の人はスゴイと思いますが」
ポルポル「よし、俺も参戦だ。うなぎ釣ってやるぜ」
レロレロ「うなぎは4匹くらいしかいないらしいですし、餌もうなぎ用のものではないですから難しいと思いますよ」
ポルポル「4匹? ずいぶんと具体的な数字が出てきたな」
レロレロ「別所沼は今年の春から夏にかけて“かいぼり”を行ったんですよ」
ポルポル「“貝堀”?ここ沼なのに貝なんているのか」
レロレロ「違いますよ。“かいぼり”というのは水をくみ出して泥をさらい、天日に干すことを指します。このときは1147匹の魚を一緒に保護したそうで、これをもとに大体の生息数も分かっているんです」
ポルポル「……でも、それは数ヶ月前のことだろう?もしかしたら爆発的に増えてうなぎフィーバーが起きているかもしれないじゃないか」
レロレロ「そんな異常増殖が起きていたら、この沼の生態系はメチャクチャでしょう!! まぁ、多少は増えている可能性もありますけど」
……数時間後
ポルポル「……なぁ」
レロレロ「ポルポル、なんです?」
ポルポル「この俺たちがひたすら釣りをする絵面、ひたすら地味なんだが大丈夫なのか?」
レロレロ「それはそうでしょう。釣りはひたすら待つものですからね」
ポルポル「いや、企画として、だな……まぁ、いいか」
……さらに数時間後
ポルポル「本当に釣れないな。地元の皆さんは普通に釣れているというのに。一体なぜなんだッ!!」
レロレロ「もしかしたら、餌が悪いのかも知れませんね」
ポルポル「餌?」
レロレロ「そうです。地元の人たちはきっとこの場所に適した餌を使っているのでしょう。私が用意したイクラでは多分食いつかないんじゃないでしょうか」
ポルポル「なんだ、事前に調査してイクラにしたわけじゃなかったのか」
レロレロ「アブラムシやミミズを触りたくなかったんですよ。だからイクラにしました」
ポルポル「いや、それにしてもイクラは無いだろ……なんで、イクラなんだよ!?」
レロレロ「それはほら、友釣り感覚で……」
ポルポル「おい!! レロレロ、引いてるぞ!!」
レロレロ「きました!!この反応は大きいですよ!!」
ポルポル「くそ、先を越されたか。だが二人そろっての坊主は避けられそうだな」
レロレロ「引き上げますよ」
レロレロ「……見事に餌だけ取られていますね」
ポルポル「さすが、普段から大勢の釣り人に釣られ慣れてる魚たちだ。強敵だな」
レロレロ「イケたと思ったんですけどね」
ポルポル「このまま終われるか!! 意地でも釣りあげてやるぜ」
……さらに数時間後
レロレロ「もう陽が傾いてしまいましたね……」
ポルポル「時間切れか、無念だ。最近の俺たちは負けてばっかりだな」
レロレロ「ええ、我ながら不甲斐ないものです」
ポルポル「今度はジョージやジョセフと一緒にリベンジしようぜ」
レロレロ「そうですね。この借りを返しにまた来ましょう」
何の成果が得られずとも旅を続ける二人。
埼玉を巡る旅はまだまだ終わらない……。
第13回に続く
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